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家具付き物件のリアル:いる?いらない?――便利さの裏にある“責任と注意点”を知る

お引越しお役立ち

吉利 美玖

筆者 吉利 美玖

不動産キャリア3年

明るさと笑いに溢れています!

家具・家電付きの賃貸物件。
「すぐに生活が始められる」「引越しがラクそう」――そんな理由で人気の高い物件タイプですが、その一方で、“本当に自分に合っているのか?”と迷う人も少なくありません。しかし、宅地建物取引士として伝えたいのは、「便利さの裏にある責任とトラブル」です。

本記事では、家具付き物件のメリット・デメリットに加えて、見落としがちなトラブルリスクや修理費用の責任範囲について、契約実務上の視点から詳しく解説します。



家具付き物件とは?

一般的に家具付き物件とは、ベッド・冷蔵庫・洗濯機・電子レンジ・テーブル・椅子などの家具家電が、最初から部屋に備え付けられている賃貸住宅のことを指します。ビジネスホテルに近い感覚で住み始められることから、短期滞在や転勤者向け、学生の初めての一人暮らしなどに特にニーズがあります。


家具付き物件のメリット


1. 初期費用が抑えられる

冷蔵庫・洗濯機・ベッドなどを購入する必要がなくなるため、引越しにかかる初期投資を大きく減らせます。家電一式をそろえるとなると10万円以上の出費になるため、このメリットは非常に大きいといえます。

2. 引越しがスムーズ

持ち運ぶ荷物が少なくなる分、引越し費用も安く、手続きも簡単になります。特に転勤や短期契約の場合には、コストも時間も抑えられるメリットがあります。

3. すぐに生活が始められる

入居日当日から電化製品が使えるため、生活立ち上がりの手間が少ないのも魅力のひとつ。急な転勤や海外からの帰国者にとっては利便性が高いです。


デメリットと気をつけたいポイント


一方で、家具付き物件にはいくつかのリスクや制限も存在します。特に注意したいのが「故障・破損時の責任の所在」や「原状回復時のルール」です。

1. 家賃が割高になる傾向がある

家具や家電の提供・維持管理にかかるコストが家賃に反映されるため、同条件の家具なし物件に比べて月額家賃が高く設定される傾向があります。長期間住む場合、結果的に自分で購入した方が経済的になる可能性もあります。

2. 家具・家電の品質や使い勝手に制限がある

部屋に備え付けられている家具家電は、自分の好みやサイズに合わないことが多く、交換が難しいこともあります。冷蔵庫が小さい、洗濯機が二層式で使いにくい、ベッドのマットレスが柔らかすぎるなど、実際に暮らし始めてから不満が出るケースもあります。

3. 故障・破損時の責任範囲が曖昧になりがち

特に重要なのがここです。家具付き物件における家電・家具が「設備」として契約書に記載されているか、それとも「残置物」として扱われているかによって、故障・破損時の修理費用負担の範囲が異なります

● 設備扱いの場合:

→ 通常使用の範囲での自然故障は、貸主の責任で修理または交換がされるのが一般的です。

● 残置物扱いの場合:

「現状のまま使用可」として貸主の保証責任は免除されていることがほとんど。

故障しても借主の自己負担になる可能性があります。

このため、契約書や重要事項説明書に明記されている表記を事前に必ず確認する必要があります

4. 過失による破損は借主責任に

契約時に「自然消耗は貸主負担」としていても、家具を倒して壊した・飲み物をこぼして汚したなど、明確な過失がある場合は借主が修理・交換費用を負担することになります。

また、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも、借主の責任による損耗・汚損は原状回復義務があると明記されています。

【出典】国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」
//www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/torikumi/honbun.pdf


よくあるトラブル事例


トラブルの一例をご紹介します。

【事例①】

内容:入居中、床のカーペット箇所に飲料をこぼし、染みになった。

対応:ガイドラインでは、通常の使用を超える汚損(飲料のこぼれ)については借主に原状回復義務があるとされています。

出典:ガイドライン P.21「飲み物等をこぼしたことによるシミ、カビ」項

【事例②】備え付けの冷蔵庫背面の壁クロスに焦げ跡があった(通常損耗)

内容:入居時から設置されていた冷蔵庫の背面の壁紙が、長期間の使用で黒ずんでいた。

対応:これは冷蔵庫等の家電使用に伴う通常損耗であり、借主に原状回復義務はないとされています。

出典:ガイドライン P.22「冷蔵庫裏の黒ずみは通常損耗」項

【事例③】ソファの脚が折れた → 修理費を借主に請求された

内容:通常使用中にソファの脚が破損したが、管理会社から「借主の使い方に問題があった」として修理費を全額請求された。

対応:故意・過失による破損が認められる場合は借主負担となるが、「通常使用の範囲であったか否か」の立証が重要。

ガイドラインでは、「家具の破損等が過失かどうか曖昧な場合、借主の一方的な責任としないことが望ましい」とされています。

出典:ガイドライン P.14「貸主・借主双方が立証できない場合の配慮」


  契約前に確認しておくべき4つのポイント


  1. 家具・家電は「設備」か「残置物」か?
    → 書面に明記されているかをチェック。

  2. 故障・破損時の対応は?
    → 修理・交換の負担はどちらか、過失時の扱いも確認。

  3. 原状回復の対象に家具・家電は含まれるか?
    → 汚れ・傷がどこまで請求対象になるのか確認。

  4. 動作確認の有無・状態の記録
    → 入居前に写真を撮る/チェックリストを残すと安心。


まとめ

家具付き物件は便利で魅力的ですが、その裏には責任の所在やリスクの違いが潜んでいます。特に、家具や家電の不具合・破損時の対応、退去時の原状回復ルールなどは、トラブルを避けるためにも契約前にしっかり確認しておくべきポイントです。

「いる? いらない?」と迷ったときは、利便性とリスクを天秤にかけて判断しましょう。
一時的なコストよりも、住んでからのストレスや出費のほうが大きくなることもあるからです。

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