築年数は古いけど快適に暮らせる物件の見抜き方|不動産のプロが教える優良物件発見術
「築30年超え」と聞くと、少し身構えてしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、築年数だけで物件の良し悪しを判断するのは早計です。
実は、築年数が古くても管理状態や構造、設備更新状況によっては快適な暮らしができる優良物件が少なくありません。
本記事では、不動産の現場で多数の物件を見てきたプロの視点から「古くても“住んで正解”な物件」を見抜くためのポイントをご紹介します。
1. 築年数≠住み心地。まずは“中身”を見る
「築30年超え」と聞くと不安になる方も多いかもしれませんが、実際には築年数だけで物件の価値や住み心地を判断するのは適切ではありません。
築年数は建築からの年数であり、物件の性能や住みやすさをすべて表すものではありません。
国土交通省の「中古住宅流通促進・活用に関する研究会報告書(平成25年)」では、以下のように述べられています:
「築年数のみによる評価ではなく、躯体の性能、維持管理、リフォーム履歴等を含めた実質的な評価を行うべき」
引用:国土交通省「中古住宅流通促進・活用に関する研究会報告書」
//www.mlit.go.jp/common/000990586.pdf
つまり、見た目が古くても、しっかり管理され、メンテナンスがされていれば実質的な「寿命」は延びるということです。
この考え方は、近年の住宅インスペクション(建物状況調査)の普及にも表れています。実際、見た目はレトロでも、「水回り更新済」「内装リフォーム済」「定期清掃の行き届いた共用部」といった条件を満たす賃貸物件は、非常に快適な住環境を維持しています。
2. 内見時に注目すべき3つのポイント
以下の3つは、プロが内見時に真っ先にチェックする要素です。
(1)水回りの更新状況
キッチン・浴室・トイレ・洗面台などの水回りは、リフォームされているかどうかで生活の快適度が大きく変わります。
チェックポイント:
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排水口の臭いが上がってきていないか
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浴室のカビ臭、設備の交換履歴
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トイレに温水洗浄便座がついているか
一例ですが、築30年以上の物件でも水回りを近年リフォーム済みのものは、入居後の修繕依頼件数が少ない傾向にあります。管理の現場でも体感的に感じる部分です。
(2)クロスや床のリフォーム歴
内装のリニューアル具合で、部屋の印象はガラッと変わります。
ポイント:
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クロスの色ムラ・はがれがないか
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床材がクッションフロアかフローリングか
(3)建物全体の管理状態(共用部)
室内がきれいでも、共用部が荒れていると住み心地に直結します。
たとえば:
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錆びた手すり、劣化した階段、照明が暗い
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ゴミ捨て場がきちんと管理されているか
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雑草が伸び放題になっていないか
これらはどんなに築年数のたっていないお部屋でも「住んでみたら思ったより嫌だった」という声が出やすいポイントです。
3. 賃貸で築古物件を選ぶメリットとは?
築浅物件は魅力的ですが、築古にもこんな利点があります。
●家賃が抑えられる
同じエリア・間取りでも、築30年以上で1〜2万円安くなることも。
コストを抑えた分、他の条件を重視できます。
●間取りにゆとりがある物件も多い
築年数が古い物件は、今のコンパクト設計よりも広めの2DK・3DKが多く、「ゆとりある暮らし」にはぴったりです。
●大家さんや管理会社の姿勢が見える
長く使われてきた物件ほど、「どう維持するか」に大家さんの意識が現れます。
内装の更新頻度や清掃状況がしっかりしていれば、管理体制も期待できます。
●築古ならではの趣きや味わいが楽しめる
新しい物件にはない、木の温もりやレトロなデザイン、懐かしさを感じられるのも築古物件の魅力です。
歴史を感じながら暮らすことで、住まいに愛着が湧きやすく、心地よい生活空間になります。
4. 中古売買と比較したときの違い(補足)
中古マンションや戸建てでも、「築古×リフォーム済」はコスパのよい選択肢として注目されています。
ただし、賃貸と異なり、構造面のチェック(雨漏り・傾き・断熱性能など)は買主側の自己責任になるため、インスペクション(住宅診断)が推奨されます。
引用:国土交通省「建物状況調査(インスペクション)活用の手引き」//www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001735147.pdf
まとめ|築年数に惑わされず、“中身”で見る目を
築年数は、物件選びの一要素にすぎません。
それよりも、管理状態・設備更新・建物の使われ方をしっかり見ていくことが、不動産選びで後悔しないための近道です。
古いからダメじゃない。
「古くても、ちゃんと住める物件」は、探せばきっと見つかります。